貴院の開設は、2002年4月であり、オープン後約2年の若い病院である。目指すところは、超高齢化社会に向けて、医療サービスと介護サービスの有機的な連携を図ることによって、地域住民に必要とされるような、地域に根ざした総合的サービスの提供を行うということである。また、そのためには、生命の尊厳と療養生活の質(QOL)を追求し、快適な療養生活を送るためにアメニティの向上を実現するとともに、訪問・通所などの充実した在宅サービスの提供を行うというものである。 開設以来日が浅く、当初目指したことがらは未だ完成されるまでには至っていない。とくに、大きなテーマである地域に開かれた病院としての活動は、ほとんど手つかずの状況である。救急への取り組み、訪問サービスの充実も前途は険しい。常勤医師やコ・メディカルの確保も、今後の課題である。 優秀なスタッフを迎えるためには、診療録管理部門や図書室の整備等は欠くべからざる事項であり、これらも今後の課題とされる。 幸い2004年4月には、現病院長の就任を見ることができた。病院長は強力なリーダーシップと暖かい人柄で、貴院の目指す方向へと、職員の力を適切に結集されつつあると見受けられる。 今回の訪問審査結果を貴院の発展の糧として、目指すところに向けて進んでいただきたい。審査結果は、領域ごとに詳細なコメントを付けさせていただいた。貴院の一層の発展に役立つことができれば幸いである。
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1.病院組織の運営と地域における役割
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貴院の理念はわかりやすく表現され、長期療養施設としての、病院の役割を踏まえた方針も明示されている。患者の権利についても具体的にされていて、院内掲示物やパンフレットを活用して、患者や職員への周知の努力もされており良好である。 将来計画については、母体法人の計画は具体的になっているものの、貴院あるいは法人会としての構想は、トップ管理者において議論がようやく開始された段階である。今後の検討にあたっては、母体法人の指示をトップダウンするのみではなく、将来計画策定委員会の構築など職員の参加可能なシステムの確立を期待したい。また、貴院が地域において主体的に果たそうとしている役割を、具体的にわかりやすく提示する努力が求められる。また、経営計画も含め、総合的な内容にまで踏みこんだ中・長期計画に発展させる必要があると考えられる。それらが、院長構想である所の緩和ケアへの対応や、総合リハビリテーションの施設基準取得といった課題の成功につながるものと考える。 病院運営では着任間もない病院長のリーダーシップが随所に発揮されて、理念の実現に向けての熱意が確認できた。しかし、病院運営に関わる課題設定の具体化は検討の余地があり、病院幹部全体とりわけ事務系幹部が病院長を支えながら、一層の指導力を発揮するよう期待したい。具体的には病院運営管理上の問題点を、的確に幹部が把握しているかを、振り返る必要があると思われる。そのことは、自己評価評点と実際の問題点が、しばしば一致していないことからも感じられた。現状の問題を的確に把握する中で、病院の改善課題を具体的に設定し、職員に明示しながら、改善意欲を引き出す指導が求められる。 病院組織の運営については、寄付行為や組織運営規程は整備されている。しかし、組織図は事務長や看護部長の組織的位置付けが必ずしも明確でないこと、各部署責任者が明示されていないなど、指揮命令系統がわかり難いので工夫が必要である。また、年次事業計画をはじめ病院の重要決定事項の伝達は、現在、月に1度の朝礼で15分ほど行われているが、部署長の会議・職場会議・院内ニュースなど多様な伝達の仕組みの工夫が必要なものと考える。 情報管理機能は、情報を統合して管理する部門はなく、各部門で別々に管理されている。院内情報システムは外部ネットワークに接続されていないので、ネット上の情報漏えいのリスクはないが、職員には電話での問い合わせに対する患者情報の院内規約の設定などを検討することが望ましい。医療活動や診療実績に関する基本情報の把握は、医事コンピュータの出力する基本帳票に止まっていて、院内諸会議で活用できる資料として提供しきれていない。診療情報の開示に関する病院の方針とシステムは明確であるが、取り組み開始からの日も浅く、開示実績はない。したがって、その意義と重要性に関する職員教育研修に努力するとともに、患者および家族にも適切に周知するよう期待したい。 病院幹部は関連法令を理解し、各種法令や基準の遵守もなされており、良好である。 職員の教育研修については、教育の計画性、教育・研修内容の検討に努力が必要で、とくに長期療養の役割も担う病院としての、高齢者ケアの特性に関わる教育・研修が必要と考えられる。職員が高齢者ケアへの確信と働きがいを持つことが、決して低いとはいえない離職率の改善にもつながるものと期待できる。外部研修は一部の職種に偏重しているので、医師をはじめ看護・介護の職種への病院としての支援も期待される。 医療サービスの改善活動は外来部門で部分的に取り組まれているが、病院としての組織的な取り組みには弱さが見られ、具体的な改善課題と目標の設定に努力することが求められる。 地域の医療機関や福祉施設との連携はソーシャルワーカーが適切に担っているが、組織図上の位置付けを明確にすることで、活動の一層の前進を期待したい。紹介患者の受け入れについては、紹介元施設への返答をチェックするシステムがないので、検討されたい。 地域活動は、地域での講演会・健康教室・セミナーなどの活動は、貴院の開設以来行われていない。ボランティアについても、いわゆる慰問的な形では受け入れがあるものの、自立的なボランティア活動の実績は見られない。2年前にまったく新しく建設された貴院にとって、地域住民との交流を展開することは、病院の存在意義を規定する重要な活動分野であると思われる。地域と隔離した医療機関としてではなく、将来にわたって住民とともに歩む医療機関であり続けるために、地域活動の抜本的強化を望みたい。地域の健康増進に寄与する活動およびボランティア活動について、改善することが求められる。同じ視点から、他施設と比し外来患者が少数である現状なので、慢性疾患管理やリハビリテーションなどを中心とした病院の特徴を、地域にアピールする広報活動を重視することも望みたい。
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2.患者の権利と医療の質および安全の確保
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患者の権利と職業倫理に関する貴院の方針は明文化されている。1枚の用紙に印刷されたその方針は新しい案内書に追加・挿入され、院内に掲示もしてあるが、患者・家族や職員への周知はこれからの努力が必要である。また、患者が主体的に療養生活に臨む必要があることを、患者にもっと精力的に伝える努力が望まれる。 説明と同意を行う体制は一応確立しており、説明のための院内指針とも言うべき文言もあるが、それが診療現場で遵守されているかの把握に関しては、このことが常に診療録に記載されていることがベースになる。記録の徹底を望みたい。また、同意書の文面に立ち会い人の署名欄のない診療録が散見される。説明と同意のプロセスにおける環境やプライバシーへの配慮は、患者・家族の立場・心理状態を考えて、さらに行き届くよう検討を望みたい。患者の立場を配慮して説明が行われるのは当然であるが、患者が理解できたかどうかの確認も大切である。さらに、今後は、患者の心理的側面への配慮として、必要に応じて精神科医・臨床心理士・リエゾンナース等と連携できる体制を検討されたい。患者の請求に基づく診療記録などの開示における意義・目的・内容・手順などは、講習会・研修会などで職員に教育し、周知して理解を得ることが求められる。 患者の安全確保のための活動体制はできているが、組織的な対策を立てる部会や委員会の役割・責任・権限などのうち、責任体制の一部があまり明確ではない。また、各部署の責任者がさらに活動を促進し、医師や各職種が部署レベルや病院全体として各職種のレポート報告・対策立案へ積極的に参加することが望まれる。安全確保のための院内の組織的活動方針と手順は文書化されているが、今後は、必要に応じ更新することも検討課題となる。職員に周知させるための組織的活動方針と手順のマニュアルも毎年改訂し、職員全員に配布することが望ましい。患者の安全確保のための職員教育は、病院全体で計画的に実施し、内容を充実して取り組むことが必要である。問題事例に関する原因分析や対策立案の方法についても、今後、あるべきカリキュラムを検討して教育を実施されたい。患者の安全を確保するための重要な手順は、各領域でほぼ確立している。しかし、患者・部位・検体・医薬品などの識別に関する手順、情報伝達エラー防止に関する手順、事故のリスクの把握と事前対策に関する手順、医療行為のプロセスを監査する手順および患者の反応の観察・モニター、変化などへの迅速な処置に関する手順など、おおむね確立してはいるものの、全て各現場でそれぞれの手順が確実に行われる仕組みがあるかどうか、常に検証しておくことを望みたい。さらに、常に手順の見直しに心がけられたい。 患者の安全確保の要因を究明し改善対策につなげる体制は一応確立しているが、改善策につながる原因究明と分析後の改善の実績や、改善策の実行とその効果の確認まで行われた事例は少ない。外部と連携して患者の安全を確保する体制も、担当者を明らかにして、収集した情報を活用する体制を整備されたい。 医療事故発生時の手順はできているが、職員への周知・徹底が望まれる。また、必要に応じて公表を検討するという基本的な考え方は示されているが、患者・家族の同意、プライバシーへの配慮、公表のタイミング・手段など具体的な手順を充実されたい。 院内感染防止対策マニュアルは作成されているが、貴院の機能・役割を考え、感染のリスクを高める医療行為を安易に行わない方針を、マニュアルに採用し活用することを望みたい。また、院内感染のリスクを低減させる具体的な対策のうち現状に即した手順の見直しや、リキャップしない方針のさらなる徹底を図られたい。予防接種に関する職員教育についても、計画的に充実を図られたい。院内感染に関しては、検体の種類や病棟別に分離菌の種類や推移を把握し、抗菌薬感受性率も記録しておくことが望まれる。また、院内感染率を評価し、活用した場合には記録に残すことを励行されたい。院内感染管理についての教育活動については、責任者を明確に定め定期的に教育活動を行い、その記録を確認することが求められる。また、院内感染管理に必要な情報収集・情報提供の担当者は、全職員に周知されていることが望ましい。
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3.療養環境と患者サービス
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接遇と応対については、受付窓口の職員が対応しているが、高齢者・障害者への配慮としては、さらなる充実が望まれる。職員の挨拶や身だしなみはよい印象を与えており、接遇教育は、接遇改善委員会により行われている。診療担当者・各部門責任者名が紹介され、病棟スタッフは写真入りで紹介されている。しかし、玄関等への貴院の各部門管理者名の表示がないので、明示されたい。また、外来者の総合案内機能は受付が全て担っている。案内・表示には必要な情報が含まれているが、掲示物の位置・文字の大きさについては、高齢者・障害者等への配慮が望まれる。また、外来待ち時間は定期的に把握されているが、外来患者が少なく、待ち時間の苦痛は少ないと見受けられる。 医療相談については入院案内で説明しているが、外来者の目にとまる相談窓口の案内・表示が必要である。MSW2名が患者・家族の多様な相談に応じ、院外諸機関との連絡調整を行っている。相談にあたっては、必要の都度、医師・看護師長等との連携を図っているが、ケアカンファレンスへの参加など、さらに患者情報の共有に努められたい。 患者・家族の声を聴くための投書箱を設置しているが、2年間、投書は1通も見受けられない。患者満足度調査は実施していないが、看護部として入院時の患者アンケートや、家族会での希望聴取等を行っている。また、患者・家族の希望や苦情に対する改善例は、それぞれ1例であるが、掲示板による患者・職員への回答もなされている。さらに、投書を増やすための取り組みなど、意見を出しやすい雰囲気の醸成が求められる。 患者や面会者の利便性については、最寄駅からかなりの距離があるため、バス・タクシーの利用が多いが、貴院への交通案内は病院案内等でなされている。また、電話の設置場所については車椅子への配慮は見受けられるが、自販機コーナーの一角または廊下に面しているため、プライバシーへの配慮が十分とはいえない。スクリーンの設置などの工夫が望まれる。入院患者の利便性については、入院生活の規則は患者本位に運用されているが、患者の立場に立った入院生活の案内を検討されたい。また、生活延長上の設備やサービスは、おおむね利用できるよう配慮がみられる。院内のバリアフリーについては、高齢者・障害者にも安全に利用できるような環境が整備されており適切である。 外来患者のプライバシーについては、呼び出し・診察室・検体・処置行為など、全てに配慮されている。また、入院患者についても面談室・病室・患者名の表示等について、プライバシーが確保されており評価できる。 療養環境の整備については、総務課が担当している。トイレの手摺り・洗面台・ドアの取っ手など、高齢者に配慮した設備・備品が整備されている。しかし、点検・補修については、全て看護部に委ねられているが、点検する部署を定め定期的に施行されたい。また、院内は清掃も行き届き、各病棟の美化委員の活動もあり、整理整頓されている。禁煙・分煙については、平成16年4月から館内禁煙としている。看護部では喫煙検討委員会を設け禁煙教育に取り組んでいるが、施行間もないこともあり、さらなる継続を望みたい。 療養環境としては採光・彩色等に配慮され、病棟の静寂が保たれている。病室内は整理整頓され、空調についても柔軟に対応できており、快適性が保たれている。食事については、患者の嗜好による個別対応がなされている。また季節食・行事食には工夫がみられ、年間25回実施している。しかし、選択メニューは月1回であり、延食への対応と併せて、今後の検討が望まれる。ベッドは全て調節可能なものが採用され、安全性も保持されているが、定期的な清掃については、今後の検討が望まれる。トイレの施設的な配慮としては、数・広さ・安全性・清潔性ともに適切であり、車椅子用トイレも確保されている。浴室については各病棟に特殊浴槽と一般浴槽が配置され、安全性も確保されているが、入浴の頻度は検討課題とされたい。 災害時の対応については、防災マニュアルが作成され、防災訓練が定期的に実施されている。また、休日・夜間・停電時の対応体制は整備されているが、次回は休日・夜間を想定した訓練を実施されたい。大規模災害時の対応については、マニュアルは整備されている。しかし、医薬品の備蓄はあるが、食料品・水については1日分程度であり、いずれも3日分程度の備蓄が望ましい。
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4.診療の質の確保
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<診療体制の確立と各部門の管理> 貴院では医師・薬剤師などの法定人員については基準を満たしている。しかし、病院の規模・役割・機能および診療管理業務全般を見ると、常勤医師数がやや少ないように見受けられる。組織図は現状を反映した明確なものを作成し、診療部門の職制・職務規程も整備されたい。診療上の問題については運営会議があるが、議事録によれば会議の運用・議題の範囲などの一部にややわかりにくい部分もある。診療上の基本方針や目標は検討されているが、プロセスを明確にし、医師や各部門の職員に周知・徹底されたい。また、医師の病院への帰属意識を引き出し徹底させる工夫など、常に継続した努力が望まれる。診療における倫理に関する教育については、着任後日が浅いが病院長がすでに3回も訓示や講義を行っている。今後も継続的・計画的に実施されることを期待したい。 医師の能力や病院への貢献度は、病院の組織的活動への関与や貢献度の把握にとどまっており、診療能力や実績の把握までには至っておらず、評価基準の作成が望まれる。医師の学会・研修会への参加は支援されている。しかし、院内の研修会については、今後、担当者を決め年間計画を立て、予算の裏付けのもとに実施し、記録・評価することから始めることを望みたい。 診療録管理部門は担当者が明確でなく、医事課全体の管理であり、医事課の一部門とみなされている。診療情報管理に関する教育を受けた職員の配置はなく、通信教育受講中の職員もいない。今後、診療録管理部門の体制を整備するよう、改善が望まれる。診療記録の閲覧室や診療録の保管庫などは、一応整っている。しかし、診療情報管理に必要な情報機器の整備がなされていない。診療情報管理規程が平成16年6月に策定されたばかりであり、運用は今後の問題である。また、現在は、一般退院診療録と死亡退院診療録が別保管となっている。さらに、一般の退院診療録は、退院の年度ごとにID番号順に管理されているが、全体が一元的にID番号順に管理されることが望ましい。診断名は、ICD-10などの標準的なコード化がまだ行われておらず、診療情報を有効活用するよう改善が望まれる。 図書室は図書コーナー的存在であり、関連図書は若干整備されているが蔵書は少なく、文献と呼ばれるほどのものは見受けられない。図書室は閲覧テーブルと椅子の配置はあり、24時間利用できるが、利用したい図書室までには整備されていない。また、文献検索を行う機器・手段も講じられていないことから、図書室機能を整備するよう改善が求められる。 臨床検査部門は外部委託となっているが、検査項目も多く、ほぼ病院の機能に見合っている。しかし、検査部門の管理責任体制を明確にすることを望みたい。また、採血等患者との接点がある場所では、患者のプライバシーへの配慮も忘れずに対応されたい。施設・設備・機器の保守・点検はほぼ適切に行われているが、トラブル発生時の原因究明や内容・対策の記録も残しておくことを望みたい。災害時・緊急時の避難経路は常に明示し、周知していることが必要である。さらに、検査結果の報告手順、とくにパニック値の取り扱いや結果の問い合わせ手順は、一部に不明確な事項もあり充実されたい。内部・外部精度管理の結果については、問題点の検討と必要なコメントの保管が求められる。 手術検体の病理診断は、貴院の方針と役割から“NA”とした。 画像診断部門には非常勤医師0.1人が配置され、診断業務に対応している。装置の保守・管理は自己点検によって行われている。画像診断の報告書は、非常勤医師や院外の専門医に相談できる機会もある。病院全体として常勤医が少ないため、症例検討会は定期的にはできないが、あらゆる機会を使い画像診断の結果について検討を行っている。 薬剤師は1人のみで、病棟業務や情報管理業務への対応に問題が残る。調剤用設備・機器の整備記録、調剤室の安全性の記録は明確に記載されたい。薬剤の保管・管理は適切に行われている。調剤も処方の確認・監査は時間間隔をおくなど工夫し、調剤過誤は把握している。薬剤情報については院内医薬品集の作成、医薬品情報問い合わせ、新規採用薬や副作用に関する情報提供など、全て1人の薬剤師の努力により実施されており、体制上の限界はみられる。なお、今後も必要な記録は明確なものを残すよう努力を続けられたい。 輸血血液部門の体制は、各業務の実務担当者の責任をさらに明確にした手順が望ましい。また、夜間・時間外の対応手順および輸血用血液製剤の保管に関する基準・手順をわかりやすく明文化したものが望まれる。現在まで輸血実施例はあまり多くなく、輸血用血液製剤の発注・使用状況は把握されている。 手術・麻酔部門と行われておらず、“NA”とした。 救急部門は貴院の方針により、救急告示を受けておらず、救急診療にも対応していない。通院中または在宅療養患者の急変時には、関連病院との連携で全て転送する体制であるため“NA”とした。 栄養部門の運営体制の整備されている。しかし、栄養指導件数が少ないため、一層の努力が要請される。 リハビリテーション部門の体制は、役割・機能に応じた職員が確保され、機器も整備されている。しかし、その運営上、リハビリテーションの実施内容と進捗状況は、診療情報一元化の基本に基づき、その都度、診療録に記載し確認できることが望ましく、あるいは、必要な情報を定期的に添付するなど、検討されたい。 訪問サービス部門の体制は、貴院の方針として訪問介護に力点を置いて運営されている。訪問看護は地域のステ-ションと連携をとり、訪問診療は在宅患者にはその都度対応し、急変時には関連病院への受け入れも可能である。訪問リハビリテーションは行っていないが通所リハビリテーションについては、理学療法士・作業療法士が同一法人での実施を支援している。訪問サ-ビス全体については、地域との連携も取り入れながら実施する方針をとっており、貴院の役割もそれなりに明確になっている。
<適切な診療活動の展開-ケアプロセス-> 診療の責任体制については、常勤医が主治医となっており、主治医相互間の連絡は常に保たれ診療責任は確立している。回診は毎日行われ患者への説明や対応、必要なときの対診・他科受診も実施され、医学的管理は適切である。医師の指示出し・指示受け・実施の仕組みはできているが、まだ明文化されていない。また、指示の伝達・実施を確認するための署名に、判読し難い例が散見される。指示の変更が迅速に正しく伝わるよう、今後も伝達ミスを防止するための、あらゆる工夫を続けられたい。医師の指示と確認に関するコミュニケーションは円滑である。診療録の記載については、誰もが判読できる文字で記載し、また、記載漏れや各種同意書に立会人の署名欄のない例もが見受けられるので、充実することが望まれる。退院時要約は、院長の陣頭指揮により作成率が飛躍的に向上しており、今後も継続されることを期待したい。 入院の決定は適切に行われているが、入院時の患者情報の記載漏れが若干見受けられる。入院診療計画は適切に作成され、また、計画の見直しに応じて診療計画が新たにつくられ、患者への説明も記載されている。 臨床検査は外注の項目も多いが、ほぼ適切に実施されている。侵襲を伴う検査を必要とする患者は、貴院の役割・機能によるものかあまり多くはない。主治医による検査・診断結果の評価所見や、意見はさらに充実した記載を期待したい。 薬剤投与の管理のうち処方に関しては、抗菌薬・血液製剤などの使用指針や、手順書が遵守されていることの確認が難しい診療録が見受けられる。病棟における薬剤の管理は適切であり、薬剤の投与については、注射施行時の注射箋との照合の徹底が求められる。また、服薬管理指導・薬歴管理は行われていない。適切に実施されるための体制の充実が望まれる。 手術・麻酔・処置については、行われておらず“NA”とした。 栄養管理と食事指導は、現状ではほとんど行われていない。医師の指示に基づいて、積極的に実施することを求めたい。 リハビリテーションについては、ニーズに基づいて適切に実施されている。 QOLへの配慮と緩和医療についてはあまり実施例が多くないが、患者の訴えを客観的に評価し疼痛緩和のプログラムを選択する手順をさらに明確にされたい。また、さまざまな症状緩和を図ったときは、関連事項を診療録へ明確に記載することを望みたい。また、人生の仕上げにおける患者や家族への対応として、心理的支援の取り組みについても、さらに検討を続けられたい。 行動制限に関する方針と適用する場合の基準は、明確になっている。しかし、医療上行動制限が必要である根拠や継続期間など、医師による具体的かつ詳細な指示と的確な記録が求められる。 院内緊急時への対応は、適切になされている。 退院時の療養指導については、服薬指導以外はほぼ適切に行われており、退院後の受療方法や制度の利用についても、必要に応じて指導されている。退院後の療養継続のための連携・調整も、おおむね適切に実施されている。退院時要約は作成率の向上は図られたが、患者情報の提供が十分でないものが稀にあり、充実を図られたい。 症例検討会は、常勤医師が少ないため非常勤医師も加わって熱心に行われている。実施した時は記録を確実に残されたい。関連職種を交えた症例検討会も、さらに内容を充実して開催し、事後に検討しやすい明確な記録を残すことを望みたい。
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5.看護の適切な提供
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<看護体制の確立と組織管理> 看護部の理念は病院の理念と整合し、提供したい看護サービスが明文化され、看護職員にも周知されている。また、看護部の目標に沿った、各看護単位の行動目標も策定されている。しかし、活動計画としては具体性を欠くものもあり、検討を望みたい。病棟の特性を踏まえた人員配置が行われているが、さらに、看護度・業務量測定結果なども活用し、合理的な人員配置を検討されたい。看護部の組織を円滑に運営するための師長会議や7つの委員会活動に加え、各病棟に17の「部署の係」を置き機能している。今後は、各委員会活動の記録について、充実を図られたい。また、看護部の責任者は、病院運営の全ての会議・委員会に参加している。さらに、役割ごとの業務規程が明文化され、組織図の職制とも整合している。 看護部の組織・運営については、職員の意見を病棟会・部署の係・提案箱・面接等により反映し、柔軟な組織作りがなされている。また、看護ケアを実践する上での支援は、上司やプリセプターから得られている。勤務表作成の仕組みは明文化され、職員も働きやすい勤務体制と自覚している。しかし、看護師の有給休暇取得率の低さや高い離職率など、今後の検討課題として取り組まれたい。他部門・職種との業務分担と連携については、各部門と個別に検討を重ね、改善された実績も見られる。しかし、オムツの検収や機器の整備・点検等を看護師が行うなど、課題も残されている。今後は、看護職員がケアに専念できるよう、検討する場を組織化し周辺業務の整理に努力されたい。 看護部職員の能力評価については、卒後1年目の到達目標が示され、上司・プリセプターによる評価は行われているが、評価基準・手順を明文化し、さらに、充実を図られたい。また、能力開発プログラムとしては、職員のニーズに沿って職階別・コース別に企画・実施し、院外研修にも積極的に参加している。しかし、能力開発のための資源としては、教育・研修費が予算化されていない。図書・雑誌等も少なく、学会誌・文献索引集や視聴覚機器等も整備されていない。看護部職員の能力開発向上のための、教育・研修費および図書・月刊誌・視聴覚機器等について、さらなる充実を図られたい。
<適切な看護活動の展開-ケアプロセス-> 看護実践と責任体制については、看護を必要とする人への自立支援等は、良好に行われている。基本的な身体ケアは、ケア計画表により実践されているが、入浴回数についてはさらに検討が望まれる。看護基準・手順は作成して日も浅いので、見直しを継続し、さらに、高齢者・障害者の心身の特徴を踏まえた介護等の基準を充実されたい。医師の指示受けについては、仕組みも整備されている。看護実践の過程はPOSで記録しているが、患者・家族の意見や要望の記載が、少ないように見受けられるので充実を図られたい。 看護計画は標準看護計画に沿って立てられているが、精神的・社会的な視点からのアセスメントや、個別性への配慮を望みたい。また、初期計画や修正時の患者への説明の記録、患者・家族の意見を計画に反映することなど、さらに、充実することが望まれる。リハビリカンファレンスやウォーキングカンファレンスなど、必要に応じ関連職種が参加して行われているが、医師の参加は少ないように見受けられる。 検査実施への関わりについては、説明・同意を得るよう努力しているが、侵襲を伴う検査自体が少ない。また、検査の説明後、患者の理解の確認や不安の軽減への対応について、該当する検査自体が少ないこともあって、記載が確認できない。 薬剤の投与については、注射時に処方内容を再確認できるよう、手順を含めての検討が必要である。また、薬剤師への情報提供や服薬指導は行われておらず、さらに、薬剤師との連携を深められたい。緊急時の薬剤投与の指示への対応は良好であるが、夜間の薬剤の取り出しは、医師・看護師が行っている。薬剤の的確な投与の徹底のためにも、体制の充実が望まれる。 周手術期の看護は、行われていないので“NA”とした。 食事摂取については患者の状況に応じた援助や、摂食・嚥下訓練が歯科医の指導で始められている。また、栄養士による食事内容の検討等は行われているが、食事指導については件数が少なく、さらに充実を図られたい。 リハビリテーションの適用や効果については、医師・理学療法士などと検討し、ベッドサイドにおける移動動作やADL訓練などが積極的に行われている。多職種による検討会も開かれ、自立支援が適切に行われている。 行動制限についての方針や基準は明確であるが、詳細な抑制解除の手順を整備されたい。4点柵・ミトン装着が見受けられるが、回避・軽減・解除の検討に医師の参加はなく、検討事項については記録として残されたい。 療養の継続性については、外部機関との連携はMSW・ケアマネージャーを介して行われている。なお、外来における受診相談の窓口はなく、看護師が対応している。通院中の療養指導については、適宜、栄養士・ケアマネージャーなどと連携をとり、記録も残しているが、さらに充実することが望まれる。 逝去時の対応については、多床室での看取りは原則として行わない努力はなされているが、さらに、配慮が望まれる。基準・手順は明文化され、家族への対応等についても明記されている。 看護ケアを改善する取り組みについては、カンファレンスは週1~2回開かれ、医師の参加もあるが、内容・記録ともに充実されたい。看護職員の見解を診療内容に反映する仕組みはあるが、看護記録を症例検討会に活用することなどは行われていない。多職種によるカンファレンスは開催されているが、医師の参加が少ない。また、記録については、メンバーに活用されるカンファレンス記録となるよう、努力が望まれる。
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6.病院運営管理の合理性
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就業規則は労働基準法に沿った内容で整備されているが、採用時に本文を配布している実績はないので、職員への周知に努められたい。必要な人材の確保については、薬剤師と放射線技師および検査技師の複数体制化を目指して努力中である。有給休暇取得率が全体として低いこと、看護部の離職率の高さなど勤務実態を勘案しながら、職員の適正配置等をさらに進められたい。人事考課は、医師以外の職種は合理的で客観的な基準があり、賞与査定等に活用されている。今年度から看護部門にも導入されるとともに、育成型の基準も取り入れ充実を図っている。職員の労働安全衛生については、定期職場検診の実施など良好に取り組まれていることが確認できる。また、事故の防止については、医療安全管理対策検討委員会と院内感染防止対策委員会で検討されているが、針刺し事故など事故防止対策の徹底が望まれる。職場環境も良好で、職員規模に応じた職員食堂・休憩室・更衣室が整備されている。 財務・経営管理は、総務課経理係長が職務を担当し、法人グループが独自に定めた会計規則によって財務諸表が作成されている。また、外部の税理士による監査も適切に実施されている。予算作成の過程では母体法人の予算目標の指示は明確であるものの、各部署の設備投資・諸費用の要望を把握するシステムや、院内各部門の意見は必ずしも適切に反映されているとはいえない。また、職員が経営課題に積極的に取り組むための、指導性の発揮が重要であると思われる。月次の実績や諸指標についても職員にわかりやすく提示し、経営課題について職員の理解を浸透させるための努力が望まれる。 医事業務については、外来受付・入退院手続き・窓口現金収納業務など、全般にわたってマニュアルが整備され適切に遂行されている。未収金については、適切な回収努力を進めるよう望みたい。レセプト点検は作業の流れが確立しており、医師による点検もなされている。しかし、医師のチェックが必要かどうかの判断は、担当者の個別判断ではなく、病院としての基準化が必要と思われる。 設備管理は担当者の管理監督のもとに、委託業者によって各設備の点検が行われ、記録も整備されている。また、年間保守計画も作成されている。医療ガス安全対策委員会には、実質的な実施責任者である委託業者の参加が望ましい。医療機器管理については、大型機器の点検修理の履歴は確認できるが、病棟管理である心電図モニターは点検記録が不十分なので、病棟の医療機器の整備体制を構築されたい。 食材は衛生的に保管され、厨房内の温湿度管理も適切である。清潔・不潔の区分も良好で、調理室床面のドライ管理もなされ、衛生的な環境が維持されている。しかし、空調噴出口の一部の清掃が不十分なことや、一部の調理器具が床面から60㎝以下の場所に格納されていたので検討されたい。病院の保安体制は、夜間・休日の保安規約が定められているが、警備員などの体制はとられていない。徘徊行動がある患者に対しては、センサーの設置など、人権に配慮した離院防止策や安全対策が講じられている。今後、日常の勤務者に対する保安意識を高めるための教育や、訓練の充実が望まれる。 廃棄物処理については、各部署の感染性廃棄物が容器に満杯となっているものが散見されることと、最終保管庫場所で燃えるゴミと燃えないゴミが、同一保管ボックスに集積されていたので、現場への指導を徹底されたい。なお、市ではオムツの処理は一般廃棄物の処理で対応しているが、院内の最終保管庫においては、施錠可能な堅固な建造物内に保管することが望ましい。また、廃棄物処理規定は、病院の実情にあった規定に見直しをされたい。 物品購入のプロセスは、各部署から物品発注を行っており、発注担当と検収担当の位置付けは必ずしも明確になっていない。その延長でオムツの検収も含めて看護師の業務となっているので、看護業務に専念できるよう、事務部門で発注窓口やシステムの構築を検討されたい。棚卸しは年2回以上実施されているが、今後は、在庫量を定期的に見直すことも課題とされたい。 業務委託の契約書が整備され、委託業者の責任も明示されており適切である。さらに、業者が従業員の教育を行っていることを病院として確認し、内容についても協議を重ねていることは適切である。 医事紛争等の窓口は事務局が担当し、院長をはじめ病院幹部それぞれの役割分担も、明確に設定されており適切である。
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8.療養病床に特有な病院機能
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療養病棟への入院患者の受け入れ方針は、明文化されているが、痴呆度など病院の実態に合わない箇所も散見されるので、検討されたい。事前の病状把握などの仕組みは機能している。入院患者の受け入れの是非については判定メンバーで検討し、必要があれば師長も参加するが、組織的に検討することを望みたい。検討した記録はあるが、さらに、充実が望まれる。在宅療養支援の訪問看護は行われていないが、地域の訪問看護ステーションとの連携がとられている。また、訪問診療は行われていないが、在宅療養患者の受け入れには対応している。薬剤師・栄養師による訪問指導は、行われていないので“NA”とした。今後、訪問介護以外の訪問サービスについての検討が望まれる。デイケアなどの通所サービスは、本年4月に同一法人の老健施設内に移され、理学療法士・作業療法士が支援している。家屋評価や改造については、ケアマネージャーが連携をとり、理学療法士・作業療法士が指導や相談に応じており、記録も残されている。訪問リハビリテーションは行われていないが、近々、総合リハビリテーション施設基準取得構想もあるので、さらなる努力を期待したい。 高齢者や障害者などの患者の権利の擁護については、入院や療養継続に際して、本人の意思の尊重に努力はみられる。また、公民権の行使については、配慮されており、人権を尊重した呼称・言葉づかいも浸透している。金銭や私物は自己管理を尊重し、預かる場合は、個別帳簿・個別通帳により適正に管理されている。
<ケアプロセス> 療養病棟において、生活機能の自立や在宅復帰の可能性は、常に検討されている。在宅復帰の阻害要因の把握に努め、その解決に向け多職種で検討されているが、さらに、明確な記録を残す努力を継続されたい。在宅復帰が困難な患者の療養継続についても、本人・家族との面談や行政との連携など、その過程も含めてわかりやすく記録しておくことが望ましい。 機能障害の診断・機能の回復については、摂食機能・嚥下機能の障害患者への対応として常勤歯科医を関与させており、適切と考える。排泄機能障害についても月1回の非常勤ではあるが、専門医による適切な対応もあり、機能の回復のために各職種が協力して取り組んでいる。痴呆患者への対応は非常勤の神経内科医が行っており、さらに、必要な場合は関連する精神科病院に依頼して助言を得ており、おおむね適切である。コミュニケーション障害のある患者は把握されており、作業療法士がコミュニケーションエイドを工夫するなど、機能回復に努力している。原因や経過を含む医学的診断については、さらに、わかりやすい明確な記載を望みたい。 自立支援や在宅復帰の可能性を高めるよう多職種で検討し、ケア計画が作成されている。また、地域関係機関の担当者との検討会も持たれているが、対象は少なく試験外泊なども十分とはいえない。廃用症候群の発生予防や離床の促進には、積極的な取り組みが見受けられる。摂食機能の維持・向上としては、歯科医の指導により嚥下訓練が進められている。嚥下訓練プログラムとしてまとめられたい。排泄機能の維持・向上については、トイレ誘導など、排泄機能の自立へ向けた訓練が進められ、改善した事例もある。痴呆患者との意思疎通を図るための、レクリエーションなどが実践されている。コミュニケーション障害者との意思疎通としては、文字盤やボード・ジェスチャーなど工夫がみられるが、言語聴覚士の関与が期待される。 日常生活の活性化については、身の回りの清潔保持は、計画的に実施されている。入浴は個々の希望を入れて、週2回としている。日中着への着替えはなく病衣がほとんどであるが、生活リズムを確保するためにも、前向きな取り組みを望みたい。院内に理容・美容室があり、月3回開かれている。毎月の行事がレク係により計画され、レクリエーションなども1日2回、介護職を中心に積極的に行われている。面会は比較的多く、その他、家族同伴の買い物や幼稚園児の慰問など、社会との接点を保つような配慮がなされている。
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